新しいロッキングチェア(Mori:toロッキングチェア)を販売することは、積年の思いでした。
これまでのロッキングチェアはよく言えば材料を贅沢に使った椅子でしたが、近年これほど贅沢にナラ材でつくるこは非常に困難で、新しいロッキングチェアが待たれていたのですが、ロッキングチェアの設計はなかなか手を付けられない代物だったのです。
- [1] 設計者の頭を悩ますロッキングチェアの構造
- [2] ロッキングチェアの作り手から
- [3] 商品情報
設計者の頭を悩ますロッキングチェアの構造
ロッキングチェアの設計は非常に難しいものです。なぜかというと、ちゃんと立ってくれないからです。
普通の椅子は座面の高さや腰を支える位置を決めて、それをどのように支えるかを考えていく(これも大変なのですが)のですが、ロッキングチェアはゆらゆら動くものなので、座面の高さも決まらず、腰の位置も決まりません。ロッカー(地面と接する弓型の部材)の曲率や取り付け角度によって座面がどの角度で留まるかも机上でわからないのです。
最近のナラ材は若木で細く硬い。これからの椅子はそのような材料を使う設計にする必要があります。
大きな材料を立体的に削り出して造形すれば立体的に見えますし、身体へのあたりも優しいですが、今回は細い部材(線)を使って立体的な面を創り出すことが要求されたのです。
そうして何度も試作を繰り返し設計されたロッキングチェア。次は作り手側へバトンタッチします。
ロッキングチェアの作り手から
ロッキングチェアを制作する過程の一部を紹介します。
設計ではいままでの重厚なロッキングチェアから軽快なロッキングチェアへと大きく変りました。この椅子の特徴的な構造は座板と幕板を固定するのに蟻桟を用いていることです。
蟻桟を用いた椅子は他にMori:toチェアがあります。
この蟻桟は幕板を兼ねており座板も椅子の構造体として成り立っています。その為、側幕板が省略でき、軽快な見た目と堅牢性を実現しています。制作するにあたっては座板に蟻溝を掘り、その溝にあった蟻を幕板に加工します。
書くと簡単ですが、木材加工の奥深いところは同じ刃物で同じ加工を行っても結果が違ってくる事です。特に嵌めあいが重要な部分ではその違いが大きく感じられます。
それは木材の硬さの違いであったり、座板の反りであったり、はじめはその嵌め合いの程度が分からずにゆるゆるの蟻桟にしてしまう失敗もありました。
この蟻桟を座板の横から送っていくのですが、この時、嵌め合いがきつ過ぎると幕板を所定の位置まで送る事が出来ません。また緩すぎると必要される堅牢性が損なわれます。
その為、座板一枚ずつの違い見極めながら加工と組み立てを行っています。
手間と集中力が必要な作業ですがオークヴィレッジらしい部分でもあると思います。
商品情報
Mori:to ロッキングチェア
[サイズ]
幅70x奥行87x高さ110cm(座面の高さ35cm)
[材 種]
(座面)国産クリ/(笠木・脚・その他)国産ナラなど
[仕上げ]
植物性オイル(ナチュラル)
[重 さ]
約10kg