おしらせ

木組み特集・蟻桟(ありざん)を用いた無垢家具

無垢材のテーブルの反り止めなどに適した工法・蟻桟(ありざん)"


「木」に「反る」と書いて「板」と読むように、木は材となっても生きており、温度や湿度の変化により伸縮や反りが発生します。 そこで昔から日本では、木のみで部材を組む「木組み」を使ってモノをつくってきました。 その工法のひとつである蟻桟(ありざん)は、温度や湿度の変化などによる木の伸縮にも対応するため、無垢材のテーブルの反り止めなどに適した工法です。
世代を超えて受け継がれていく”100年使える家具”を目指しているオークヴィレッジでは、日本の伝統工法である「木組み」の技術を用いた家具づくりを行っています。
今回は、「木組み」の代表的な工法ひとつである蟻桟(ありざん)についてご紹介します。

蟻桟(ありざん)とは

蟻桟(ありざん)とは、テーブルなどの天板などの反りを防ぐための工法です。天板裏に台形の溝を掘り、その溝に蟻桟を送り込みます。 別名「吸いつき桟」とも呼ばれ、組み立ての際、叩き込めば叩き込むほど引っ張り、吸いつく木組みです。
決して主張することなく、季節の変わり目ごとに、長い時間軸の中で板の反りを抑制し、しかしその伸縮を妨げることのない、機能に徹した木組みとも言えます。

オークスタンダードテーブル

蟻という言葉は、木工に携わる者すべての共通語であり、なおかつ高尚な響きを持つものではないかと思います。 「おお、それ蟻でやるんですか」というような。 なぜ「蟻」なのかというと、その由来は不明です。いわゆるアリの頭の形だとか、群がっている様が蟻組みみたいだという説もありますが、一番しっくりくるのは、アリの両脚が台型に踏ん張っている様ではないでしょうか。
英語で言う「ダブテール」鳩の尻尾の方がよほどわかりやすいし、蟻という表現が日本的かというと必ずしもそう思えないあたり、ますます疑問を持ちます。
いずれにしても、木組みにおいて蟻というものは「(1)極めて丈夫」「(2)美しく奥ゆかしい」「(3)潔く、後腐れがない」と誠に優れたものです。

蟻桟(ありざん)断面図 
※写真はテーブル模型

蟻桟(ありざん)の構造

蟻桟(ありざん)はテーブル天板に蟻型の溝を突き、その溝にぴったりと合うほぞを蟻桟(ありざん)に取ります。 この溝は奥に進むにつれて、狭くなっており、くさびを打ち込むような締まり方をします。 この加工は大変な精度を求められるのですが、丁度よい締まり方をするために、職人は0.1mm単位での調整を行います。

蟻桟(ありざん)イメージ 
※写真はテーブル模型

すべて準備が整うと、蟻送りという、蟻桟(ありざん)を蟻溝にスライドさせて、所定の位置まで玄能を叩き込む工程を行います。 ここで重要なことは、他の木組みと異なり、接着剤を使用してはならないことです。接着剤を使わずに、スライドさせて組み込まれた蟻桟(ありざん)は、天板をまっすぐに反らないように矯正しつつも、伸び縮みは自らスライドして許容するという働きをするのです。 仮に、この伸び縮を許容しなければどうなるでしょうか。ストレスの行き場を失った天板は、歪みや我などといった、好ましくない状況に陥る可能性があります。

オークスタンダードテーブル

湿度の変化による乾いた音

板の伸び縮みは、周囲の湿度の変化によって発生します。特にに冬が終わり、春先の暖かく乾燥した風が吹き始める時期と、梅雨に入ってじめじめし始めた時期が最も顕著です。
この頃、木地が完成して塗装を待っている真新しいテーブル達からは、「カン」とか「パン」という音が断続的に聞こえてきます。 蟻桟(ありざん)の働きは、常にじわじわと天板をスライドさせている訳ではなく、ストレスが溜まり限界がきたところで、乾いた音とともに一気に開放されます。

また、テーブルを移動しようとして、持ち上げる力がきっかけとなって解放される場合もあります。慣れないとびっくりするくらいの音量が出ることがあるので、気にされる方も多くいらっしゃいます。 ところが、何年か同じ場所で使い込んでゆくと、次第に板は環境になじみ、あまり動かなくなってゆきます。オークヴィレッジの家具職人の見解ですが、年月とともに木は落ち着きを増していく傾向があるようです。

蟻桟(ありざん)は無垢材の個性を
分け隔てなく活かす技術

木工の技術的な難しさを一言でいうならば、木の動きをコントロールし、予測することに尽きます。
木材の乾燥や出来上がった木地の塗装といった工程は、木の動きのコントロールに大きな意義があり、仕口を切る加工にはそれの予測という経験が重要になります。木というものは個性的で、これが木工の永遠の課題であり同時に面白さでもあるのですが、そのそれぞれの個性までもはコントロールできません。
人間の性格を根底から変えることができないように、せいぜい喧嘩しない程度に仲のよいもの同士を組み合わせるのが関の山です。 しかし、テーブルの天板などは極めて個性的な材を使用することが往々にあり、そのままでは反りくり返って家具としての用はなしません。

板の伸び縮みによるストレスを最小限にしつつ、姿勢をまっすぐに保つ。これが蟻桟(ありざん)の優れた機能なのです。 蟻桟(ありざん)は、木の素晴らしい個性を生かすことができます。優等生はもちろん、数百年の歳月を経た老木も、やんちゃで生意気な若木も、好き嫌いの分かれる目のくらむような銘木も、全て立派なテーブルなどの家具として完成させることが可能です。
裏を返せば、量産家具には個性あふれる無垢材が使用できません。木やひいては森の持つ魅力を分け隔てなく伝える技術の一つが蟻桟(ありざん)なのです。

商品情報

オークヴィレッジでは、テーブルの他に、折りたたみ小机などの小さな家具にも、蟻桟(ありざん)を用いて、丈夫な造りにしています。

テーブル


チェア


デスク


ソファ

⼀覧へ戻る