オークヴィレッジを代表するダイニングチェア「Swallowチェア」も、今月をもって15周年を迎えました。
ツバメ(Swallow)の羽を想わせるゆるやかな弧を描くデザインが特長のSwallowチェア。
「長く腰かけても疲れにくい椅子」をエルゴノミクス(人間工学)面から研究し、空間における佇まいの美しさと、身体にあずける快適性を形にしました。
今回は、「Swallowチェア」の設計思想から考える座り心地のよい椅子の選び方についてご紹介します。
- [1] ダイニングとリビングの概念が融合した日本人の暮らし方
- [2] 健康に密接する椅子の座り心地の良し悪し
- [3] 椅子選びのポイント1 身体に合った椅子のサイズ
- [4] 椅子選びのポイント2 使用目的に合った椅子
- [5] ダイニングとリビングを兼用した「Swallowチェア」
ダイニングとリビングの概念が
融合した日本人の暮らし方
今や椅子は、私たち日本人の暮らしにとって、なくてはならない道具です。日々、「仕事をする」「電車に乗る」「食事をとる」「映画を観る」と、無意識のうちに様々な目的のため、椅子に腰掛けています。
意外に思われるかもしれませんが、日本人は西欧人に比べても比較的長い時間椅子を使う生活を送っています。
西欧では、ダイニング(食事をする)とリビング(寛ぐ場所)の概念を分けて空間を構成するのが一般的であるのに対し、
日本ではそれほど広い床面積が確保できない場合が多く、結果的に、ダイニング空間にリビング的要素を盛り込んで暮らし方を組み立てざるを得ません。
例えば、友人を迎え、一緒にテーブルを囲んで食事をし、そのままお酒を飲みながら映画を観る、というような暮らしです。
そのように、私たちの生活に深く浸透している椅子ですが、その「座り心地」の概念について、普段の生活でそれほど意識することはそれほど多くはないかもしれません。
健康に密接する
椅子の座り心地の良し悪し
椅子の座り心地の良し悪しは、実は健康を直接作用宇する身体にとって非常に重要な問題です。
例えば、座面が高すぎて脚が安定して床に着かないと、腿の裏が座面に押し付けられ、膝から下の血行が悪くなり冷えの原因になります。
上半身が的確に保持されないと姿勢が不安定になり、ひいては肩こりの原因になりうる、などです。
では、座り心地の良い椅子に求められる条件とは具体的にどのようなことでしょうか。
オークヴィレッジの家具設計者の立場から考えた、最低でもクリアすべき2つのポイントをご紹介します。
椅子選びのポイント1
身体に合った椅子のサイズ
一つは当然ながら「その椅子のサイズが使用者の身体に合っているかどうか」という点です。
洋服でもS・M・Lなどサイズの分類があるように、本来なら使用者の体形に合わせて椅子にもサイズがあって然るべきです。
しかし、椅子はテーブルに合わせて使うことを前提として設計されている場合がほとんどで、使用者によって座面の高さを変えると、それぞれのテーブルの高さ関係が変わってくるため、ある平均値的寸法を見つけ、それに揃えざる得ません。
実際にオークヴィレッジでは、お客様が椅子を購入される場合に、座面の高さを膝から下の寸法に合わるため椅子の足を切り詰める作業を承ることもありますが、例えばご主人と奥様との間に大きな身長差がある場合、座面の高さをいくつかに設計するかは悩ましい問題です。使用する目的や時間など詳しくヒヤリングし、最終的に適正な高さを導き出していくことになります。
椅子選びのポイント2
使用目的に合った椅子
ダイニングとリビングの概念を融合した日本人の暮らし方について先に述べましたが、その中で椅子を使う目的がよりダイニング寄りか、リビング寄りかによって自ずと求められる要素は変わってきます。
「ダイニング≒作業」を重視する場合
ダイニング≒食事、もしくは何らかの作業(書きもの、パソコン作業等)をすることが主な目的の場合、その作業に適した姿勢が必要時間保持されるのが理想的です。
具体的な椅子の設計に置き換えると、座面の奥行きがあまり深くなく、同時に傾斜も少なく、背の角度も比較的起きているもの・・・ということになります。
【ダイニング重視の椅子の商品例】
- ブックマッチチェア
幅47×奥行52.6×高さ85cm
(座面の高さ41cm)
国産ナラ材
商品情報を見る
- ブックマッチチェア(拭き漆塗/黒色漆塗)
幅47×奥行52.6×高さ85cm
(座面の高さ41cm)
国産ナラ材
商品情報を見る
「リビング≒寛ぎ」を重視する場合
寛ぎに重きを置く場合、その椅子に座る時間は比較的長くなりがちであり、よりゆったり感の高いものが求められます。 具体的には、座面は奥行や傾斜がそれなりにあり、クッション性の高いものが良く、座面の高さも若干低めで・・・ということに置く替えられるでしょう。
【リビング重視の商品例】
椅子の機能に対応していることが重要
なによりも実際の使い方に椅子の機能が対応していることが重要です。 さらに長時間腰掛けるために大切なポイントが実はもう一つあると考えています。 椅子に座る時間が長くなると人間の身体は、特に座面に押し付けられている臀部から下腿部にかけての血流が著しく悪くなり、その緩和のため頻繁に姿勢を変え始めます。 足を組んだり、腰を捻ったり、お尻を前にずらしたりする行為がこれに当ります。これらの様々な姿勢に対して相応に身体を保持する機能を有しているかという点です。
ダイニングとリビングを兼用した「Swallowチェア」
オークヴィレッジの設計者は、2003年から「エルゴファニチャープロジェクト/人にやさしい椅子の研究会※」というプロジェクトに所属し、座り心地という概念を把握するための様々な角度からの調査を行ってきました。
「Swallowチェア」はそれらの活動を通して得た様々な知見から、今の日本人の暮らし方に合ったリアルな椅子の提案を目指し設計しました。
端的に言葉にすれば、「長時間快適に座ることができるダイニングチェア」ということになりましょうか。
快適に食事をし、そのまま寛ぎ感を持って長く腰掛け続けるという行為に必要な条件を、最大公約数的に満たすための工夫を随所に凝らしています。
機会があれば、ぜひ一度腰掛けていただき、感想をお聞かせいただければ幸いです。
※県の研究機関である「岐阜県生活技術研究所」が主催する、産官学による椅子の座り心地を人間工学的な見地から調査研究するためのプロジェクト
【リビング・ダイニング兼用の
商品例】